第15回焼き鳥雑学講座

第15回焼き鳥雑学講座

皆さんこんにちは!
お気楽菜彩なんやかや、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~哲学

1|一串一会:部位と向きが味を決める

同じモモでも、繊維の向き・脂の乗り・厚みで火の通りは変わります。
串打ちは“料理の半分”。

  • カット:繊維を断ち、1ピース12〜18g程度で均一化

  • 配置:脂の多いピースを外側、赤身は中央

  • 串材:竹の含水で熱伝導を調整(乾燥し過ぎはNG)

2|塩とタレは二大言語——素材と会話する

塩は0.8〜1.2%を基準に、部位の水分と脂で微調整。
タレは継ぎ足し=記憶
。新しい旨味を重ねつつ、毎日煮沸・漉し・補糖/補醤で衛生と輪郭を守る。
塩で“輪郭”、タレで“余韻”を描くのが基本思想。

3|火の作法:近火・遠火・余熱の三位一体

備長炭の輻射×対流を読み、

  • 立ち上げは近火で表面を決める

  • 芯入れは遠火で穏やかに

  • 休ませで肉汁を落ち着かせ、仕上げで香りを乗せる
    火は強さではなく“距離”と“時間”で制御するのが信条です。

4|順番は設計思想:軽→重、乾→湿、香りの階段

スタートはさび焼き/ささみの柚子胡椒などの軽い香り。
中盤にねぎま・つくねでタレの厚み、終盤に手羽先・ぼんじりで脂の余韻。
合間にお新香・大根おろしで舌をリセット——味の階段を上り下りさせます。

5|衛生は哲学の土台:おいしさ=安心の上に成り立つ

  • 生と加熱の動線分離、器具の色分け

  • 中心まで十分な加熱(内温を安全域へ)

  • タレ壺は温度管理・煮沸・漉しを日課に
    味は再現できて初めて哲学になる。だから記録・温度計・タイマーを“感性の相棒”にします。

6|全鳥主義:一羽の“履歴”を丸ごと提供する

胸・モモ・手羽だけでなく、せせり・そり・はつ・砂肝・背肝・ちょうちんまで。
“捨てる部位を作らない”は、生産者への敬意であり、店の美学。希少部位は出す理由と出さない勇気のバランスで。

7|塩梅学:数値と感覚のハイブリッド

  • 下味の塩は重量%で測る

  • 焼成は目視(脂の泡の大きさ)+音(ジュッ→チリッ)+香りで詰める
    職人の勘をKPI化して、誰が焼いても“店の味”に収束させるのがチームの哲学。

8|対話するカウンター:ライブは味の一部

焼き台は舞台。火の向こう側で、客の速度・表情・杯の減り具合を見て順番を変える。
“こちらの塩が続きましたので、次は少し甘いタレで”——言葉と配慮も調味料です。

9|サステナブルな炭と仕入れ

  • 炭は産地と製法を選び、煙と香りを設計

  • 鶏は育ち・飼料・処理まで遡って選ぶ

  • 出汁やスープ、〆の鶏スープ茶漬けでロスを減らす
    長く続く店は、資源の循環まで味に含めています。

10|“もう一串食べたい”で終える

満腹の先ではなく、余白で終わるのが美学。
最後はさっぱりの柑橘・山椒で口を整え、また来たくなる記憶を残す——余韻設計が店の流儀です。


つくねとねぎま、二大看板の思想

  • つくね:胸ベースに皮10%・軟骨5%、塩1.3%。塩で“輪郭”、タレで“艶”。

  • ねぎま:葱の水分で肉汁を守る設計。塩は薄め、仕上げに柚子皮ひと擦りで香りを跳ね上げる。


家で試すなら:哲学の“片鱗”を三つだけ

  1. 塩を測る(1%前後)

  2. 焼いたら1分休ませる(肉汁の再分配)

  3. 軽→重の順で出す(記憶に残る流れができる)


火と塩と会話する

焼き鳥の哲学は難しくありません。
部位を尊重し、塩で輪郭を出し、火で物語を完結させる。
その繰り返しを、衛生・記録・配慮で支える。
一串の中に生産者・職人・お客の時間が重なる——それが焼き鳥屋の矜持です。

 

 

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