皆さんこんにちは!
お気楽菜彩なんやかや、更新担当の中西です。
さて今回は
~哲学~
目次
1|一串一会:部位と向きが味を決める
同じモモでも、繊維の向き・脂の乗り・厚みで火の通りは変わります。
串打ちは“料理の半分”。
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カット:繊維を断ち、1ピース12〜18g程度で均一化
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配置:脂の多いピースを外側、赤身は中央
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串材:竹の含水で熱伝導を調整(乾燥し過ぎはNG)
2|塩とタレは二大言語——素材と会話する
塩は0.8〜1.2%を基準に、部位の水分と脂で微調整。
タレは継ぎ足し=記憶。新しい旨味を重ねつつ、毎日煮沸・漉し・補糖/補醤で衛生と輪郭を守る。
塩で“輪郭”、タレで“余韻”を描くのが基本思想。
3|火の作法:近火・遠火・余熱の三位一体
備長炭の輻射×対流を読み、
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立ち上げは近火で表面を決める
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芯入れは遠火で穏やかに
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休ませで肉汁を落ち着かせ、仕上げで香りを乗せる
火は強さではなく“距離”と“時間”で制御するのが信条です。
4|順番は設計思想:軽→重、乾→湿、香りの階段
スタートはさび焼き/ささみの柚子胡椒などの軽い香り。
中盤にねぎま・つくねでタレの厚み、終盤に手羽先・ぼんじりで脂の余韻。
合間にお新香・大根おろしで舌をリセット——味の階段を上り下りさせます。
5|衛生は哲学の土台:おいしさ=安心の上に成り立つ
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生と加熱の動線分離、器具の色分け
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中心まで十分な加熱(内温を安全域へ)
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タレ壺は温度管理・煮沸・漉しを日課に
味は再現できて初めて哲学になる。だから記録・温度計・タイマーを“感性の相棒”にします。
6|全鳥主義:一羽の“履歴”を丸ごと提供する
胸・モモ・手羽だけでなく、せせり・そり・はつ・砂肝・背肝・ちょうちんまで。
“捨てる部位を作らない”は、生産者への敬意であり、店の美学。希少部位は出す理由と出さない勇気のバランスで。
7|塩梅学:数値と感覚のハイブリッド
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下味の塩は重量%で測る
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焼成は目視(脂の泡の大きさ)+音(ジュッ→チリッ)+香りで詰める
職人の勘をKPI化して、誰が焼いても“店の味”に収束させるのがチームの哲学。
8|対話するカウンター:ライブは味の一部
焼き台は舞台。火の向こう側で、客の速度・表情・杯の減り具合を見て順番を変える。
“こちらの塩が続きましたので、次は少し甘いタレで”——言葉と配慮も調味料です。
9|サステナブルな炭と仕入れ
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炭は産地と製法を選び、煙と香りを設計
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鶏は育ち・飼料・処理まで遡って選ぶ
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出汁やスープ、〆の鶏スープ茶漬けでロスを減らす
長く続く店は、資源の循環まで味に含めています。
10|“もう一串食べたい”で終える
満腹の先ではなく、余白で終わるのが美学。
最後はさっぱりの柑橘・山椒で口を整え、また来たくなる記憶を残す——余韻設計が店の流儀です。
つくねとねぎま、二大看板の思想
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つくね:胸ベースに皮10%・軟骨5%、塩1.3%。塩で“輪郭”、タレで“艶”。
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ねぎま:葱の水分で肉汁を守る設計。塩は薄め、仕上げに柚子皮ひと擦りで香りを跳ね上げる。
家で試すなら:哲学の“片鱗”を三つだけ
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塩を測る(1%前後)
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焼いたら1分休ませる(肉汁の再分配)
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軽→重の順で出す(記憶に残る流れができる)
火と塩と会話する
焼き鳥の哲学は難しくありません。
部位を尊重し、塩で輪郭を出し、火で物語を完結させる。
その繰り返しを、衛生・記録・配慮で支える。
一串の中に生産者・職人・お客の時間が重なる——それが焼き鳥屋の矜持です。